【悲しかったって言いたかっただけ①】私は幸せな家に生まれたと思っていた

「悲しかったって言いたかっただけ」というシリーズでは、私のこれまでの人生と向き合い、心に残っている記憶や思いを書いています。
第1回は「自分は幸せな家に生まれた」と信じていた頃の話から始めたいと思います。

小さい頃、私は「自分はなんて幸せな家に生まれたんだろう」と思っていました。

父と母と過ごす日常にはあたたかい時間があって、家は一応、家族全員が揃っている場所だったから。

確かに感じたことでした。全て嘘だったわけではありません。

私が「幸せだ」と感じていたのは、主に幼稚園から小学校低学年頃までのことです。

母と弟と、毎日一緒に温かいお風呂に入る。3人で湯船に浸かり、私と弟はどっちがお母さんの上に乗せてもらうか、取り合いをしていました。私の順番が来た時、母親に「今日何が楽しかったか、聞いて?」と毎日のように言っていました。母親は私に「今日は何が楽しかったの?」と聞き、私はその日幼稚園や学校で楽しかった事を話す。そんな記憶が残っています。

父は普段私たちが起きるよりも早く仕事へ出かけていき、私たちが寝た後に帰ってくる人でした。平日は起きている間に会うことができない毎日でしたが、帰ってきて母と寝室に眠りに来た父が、寝る前に必ず私たちの寝顔をのぞいているのを知っていました。父は子供をとても愛している人でした。私は普段から「お前のことは父さんが必ず守ってやるからな」といつもいつも言われていました。父は実際に私を怖い物から助けてくれていました。私は父を本当に信頼していました。大好きでした。

「私はなんて幸せな家に生まれたんだろう!」大好きなお母さんと、お父さん。

 

だけど、今振り返ると、当時の母は時々とてもヒステリックで、私に手をあげることもありました。

それを私は、「私が悪いんだ」と受け入れていたんだと思います。

だから、暴力や怒鳴り声があっても「これが普通の家なんだ」と思い込んでいました。

 

気がついたときには、弟のことを嫌っていました。なぜそう感じるようになったのか、具体的な理由は思い出せません。

弟には冷たくあたっていたと思います。でも弟は私の事を好いていたのか、わかりませんが、よく私のあとをついてきました。私はそれも嫌でした。

いくら小さい子供でも、何の理由もなく人を嫌いにはならないと思うのです。私はその理由を覚えていませんが、おそらく弟が生まれたことによって「自分の場所が減った」と思ったのではないかと思っています。

でも、幼い私がそれを理解するのは難しいことでした。できれば、両親に「あなたの場所はちゃんとある」と教えて欲しかった。

ただ生まれてきただけなのに、弟には悪い事をしました。

 

うちの家族には、何か問題が起きたときに「きちんと向き合う」という習慣がありませんでした。

明らかに誰かが悩み困っている様子でも、「どうしたの?」と聞くことはない。次の日には何もなかったかのように振る舞う。

12年前のあの日から、私も何かを感じても言葉にするのをやめていきました。

考えたところで逃げる方法がないから、考えて感情を感じても辛いだけだからです。

 

いつしか、自分の感情や考えを言語化する事もできなくなっていました。

 

家族同士の揉め事には向き合わないのに、「家族団らん」だけを欲しがる父。

「この世に4人しかいない、かけがえのない家族なんだぞ」と父に言われるたび、それを敵だとしか思えない私が悪いのだと思わされてきました。